ガス会社が電気料金を上げた、と聞くと妙に思うかもしれません。でも理由をたどると、決めたのは北海道ガスでも、送配電会社そのものでもありませんでした。導管や送配電網を使うための「託送料金」が、国の制度でどう決まるかという話です。
① いま、何が起きているのか
北海道ガスは2026年10月23日、一般のご家庭向け電気料金プラン(従量電灯B等)を改定すると発表しました。適用は2026年12月分から。理由として挙げているのは「一般送配電事業者による託送料金の改定」です。同社が示した試算例では、電気230kWh・ガス27㎥を使う家庭の月額が9,800円から10,281円へ、481円増えます(税込)。
出典:北海道ガス「電気料金プランの料金改定について」(2026年10月23日)
この「託送料金の改定」をたどると、2026年7月10日に一般送配電事業者8社(北海道電力ネットワークを含む)がそろって国に出した申請に行き着きます。本欄で7月に扱ったとおり、物価・労務費・金利の上昇を理由に、5年間の収入上限(レベニューキャップ)を期の途中で見直す「期中調整」の申請でした。審査はこの秋に進み、東京電力パワーグリッドは8月24日の審査で指摘を受けて9月1日に補正、9月4日に経済産業大臣の承認を得て、低圧の託送料金単価を税抜8.58円から9.65円/kWhへ、高圧を3.78円から4.13円/kWhへ改め、2026年11月1日から適用します。
出典:東京電力パワーグリッド「託送供給等に係る収入の見通しの変更について」ほか関連届出(2026年9月)
7月の「申請」が、この秋に「承認」と「適用」へ進み、北海道ガスのような小売会社の料金表に届いた——という段階です。
② なぜ、これが重要なのか
導管・託送の解説章が説明するとおり、送配電網や導管は「道路」のようなもので、どの小売会社のガス・電気も料金(託送料金)を払って同じ網を通ります。その料金は小売会社が決めるのではなく、送配電事業者が事業計画を国に提出し、国が審査・承認した「収入の上限(レベニューキャップ)」の範囲内で決まります。2023年4月に導入されたこの制度は、5年間の規制期間の途中でも、想定を超える物価・金利の変動があれば見直しを申請できる仕組みを持っています。
重要なのは、この仕組みが電力とガスの両方を扱う事業者を通じて、両方の商品の値段に効くという点です。北海道ガスのように都市ガス会社が電力小売にも参入している例は多く、託送料金という「自社では決められないコスト」は、電気料金だけでなく、セットで売るガスの収益構造にも間接的に関わってきます。
③ だとすると、業界はこう動く
物価・人件費の上昇が続く限り、期中での収入見通し変更は今後も他の地域・他の事業者で起こり得ます。小売会社は、託送料金が変わるたびに料金改定のタイミングと説明を迫られることになります。顧客から「なぜ今、値上げなのか」と聞かれたとき、仕入れ構造の末端——託送料金が国の認可制で機械的に決まる、という部分まで遡って説明できるかどうかが、信頼を左右します。
ガスの導管についても、大手3社の導管部門は法的分離を経て、すでに託送料金の規制下にあります。電力側で起きている「期中調整」という先行事例は、ガス導管の託送料金制度が将来同様の見直しを迫られる場面があり得ることを示す、参考材料になります。
④ 自分の仕事では、どう考えるか
料金や営業に関わる仕事なら、次に値上げの説明をする機会があったとき、「なぜ値上げか」を託送料金の仕組みまで遡って、自分の言葉で説明できるか確かめてみてください。電力小売に直接関わっていなくても、導管や料金の担当なら、電力で今起きている「期中での収入見通し変更」が、将来ガスの託送料金にも同じ形で起こり得ることを、一度考えてみる価値があります。自分が担当する料金やコストのうち、どこまでが自社の判断で、どこからが国の制度で機械的に決まっているか——その境目を説明できるか、一度自分の言葉で答えてみる問いです。
まとめの前に、関連する動きとして本欄の7月の記事も参考にしてください。
まとめ(3行)
- 北海道ガスは一般送配電事業者の託送料金改定を受け、2026年12月分から電気料金を改定(月額481円増の例)
- 背景は2023年導入のレベニューキャップ制度。物価・人件費高騰で、7月に8社が申請した期中調整が、この秋に承認・適用された
- 東京電力パワーグリッドは2026年11月1日から新単価(低圧8.58→9.65円/kWh等)を適用。料金は小売会社でなく国の制度が機械的に決める
この記事の一次資料(2)
記事の数字・範囲を限る言葉・増減の向き・因果は、公開前に別のAIがこれらの資料の原文と照合しています(編集と検証のしかた)。正確な判断が必要なときは、原文をご確認ください。
あなたの声を聞かせてください
1タップで答えられます。集計はその場で見られます。
この話、あなたの仕事との距離は?
このニュース、職場で話題になっていますか?
よければ教えてください(最初の1回だけ・任意)
「同じ業務の人はこう答えた」を表示できるようになります。この端末にだけ保存され、名前などは聞きません。
回答は匿名で集計します。寄せられた声は、記事と解説づくりに使います。取り扱いについて