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読み解き 社会情勢 2026年7月31日(金) 6:00

ガスの閑散期に、最大記録が二度出た

富山で夏期の最大供給量を8日間に二度更新。要因はガス空調

約6分 ガスみらい通信 編集

記録更新の知らせが、8日のあいだに二度届いた会社があります。しかもそれは、冬の記録ではありません。給湯も暖房も要らない季節に、ガスがいちばん流れた日の話です。

① いま、何が起きているのか

2026年7月23日、日本海ガス(本社・富山市)が、前日7月22日(水)の1日あたり都市ガス供給量が 411,418㎥(45.0MJ)となり、夏期(6月〜9月)としての最大供給量を更新したと発表しました。同社はこれを「今年2回目」と記しています。

要因として同社が挙げているのは気温と機器です。22日の平均気温30.7℃、最高外気温度36.0℃と高く、ガス空調機器の稼働が高まったことにより需要が伸びたためと考えられる——という書き方です。

出典:日本海ガス「都市ガス最大供給量(夏期)更新のお知らせ」(2026年7月23日)

1回目は、その8日前でした。7月15日の発表によれば、7月14日(火)の供給量が 409,978㎥(45.0MJ)。このときの平均気温は29.2℃、最高外気温度は33.7℃です。

出典:日本海ガス「都市ガス最大供給量(夏期)更新のお知らせ」(2026年7月15日)

7月15日の資料には、それより前の記録も併記されています。当時の「前回の最大供給量」は 2025年8月28日(木)の409,555㎥(平均気温27.2℃、最高外気温度29.7℃)。つまり昨夏に立った記録が今年7月14日に 423㎥増(0.1%増) で破られ、その8日後にさらに塗り替えられた、という並びになります。

7月14日と7月22日の差は、同社の記載で 1,440㎥増(0.35%増)。この数字は後でもう一度使います。

念のため範囲を確かめておくと、これは「夏期としての」最大です。年間を通じた最大供給量の更新として発表されたものではありません。夏期の記録が別枠で発表されること自体が、年間のピークが冬側にあることを示しています。

同じ週、電気の側でも数字が動いていました。電気新聞(2026年7月22日)によれば、気象庁が20日に関東甲信と東海の梅雨明けを発表し、7月21日には午後3時までに全国272地点で猛暑日を記録。東京エリアでは使用電力が5千万kWを突破し、北海道と沖縄を除く8エリアで今夏の最大電力を記録しました。

出典:電気新聞「猛暑、全国で需要急伸/供給力確保や融通受電急ぐ」(2026年7月22日)

② なぜ、これが重要なのか

都市ガスの需要は、冬に立つものとして語られてきました。家庭用は給湯と暖房で跳ね、季節変動が大きい——需要構造の章でもそう整理しています。夏は、その裏返しの季節です。給湯の湯温は下がり、暖房は止まる。設備は余り、供給量は落ちる。

ところが今回、記録が出たのは、その薄いはずの季節でした。しかも要因として名前が挙がっているのは冷房設備です。ガス空調——ガスエンジンで室外機を回す方式や、ガスで冷水をつくる吸収式の機器がこれにあたります。同社の資料は機器の種類までしか書いていないため、どの用途がどれだけ効いたのかは分かりません。ただ、ガス空調が主に据えられるのは業務用の建物です。需要構造の章で挙げたホテル・病院・オフィスビルの空調が、夏のガスを引っぱる側に回っていると読むのが自然でしょう。

涼をとるという行為が、ガスの需要になる。この一点が、季節のかたちを変えます。猛暑は電気だけを押し上げるのではなく、ガスも押し上げる。二つは同じ日に、同じ方向へ動きます。

もう一つ示されているのは頻度のほうです。前の記録は昨年8月に立ち、一年もたたずに7月のうちに二度塗り替えられました。累積の伸びは1,863㎥、0.45%ほど。天井が高くなったというより、天井に触る回数が増えている——効いているのは幅ではなく、頻度です。

③ だとすると、業界はこう動く

第一に、設備と体制を決める数字が、夏側からも押されはじめます。製造設備の能力、供給圧力の管理、ピーク日に張る要員と保安の体制——これらはいずれも「いちばん流れた日」を基準に組まれます。年間の最大が冬にある限り、設備の設計値そのものは冬で決まり続けるでしょう。それでも、夏の記録が同じ季節のうちに二度動くようなら、余裕を見込んでいた季節が余裕でなくなる方向に進みます。閑散期を前提にした定期修繕の日程も、その影響を受ける側です。

第二に、この需要は、負担であると同時に稼働率の話でもあります。導管も製造設備も、使われない時間には収益を生みません。冬に集中し夏に空くという形は、設備利用率の観点からは効率が悪い。ガス空調が長く「夏のガス需要をつくる商品」として位置づけられてきたのは、そのためです。猛暑で夏の供給量が伸びることは、コスト側の課題としてだけ扱うと半分を見落とします。電気とガスの両方を扱う総合エネルギー事業の設計にも直結する論点です(総合エネルギー化の章)。

第三に、同時性が調達の問題になります。電気とガスを併せて供給する事業者にとって、猛暑日は両方の需要が同時に立つ日です。ガス火力の焚き増しはLNGを食い、都市ガスの原料も同じ受入基地から出ていく。片方が空いているうちに片方を回す、という組み合わせが効きにくい日が増えるということです(ガス火力と電力システムの章)。

ここで、先ほどの0.35%に戻ります。気温の上がり幅に比べて、供給量の伸びはごくわずかでした。平均気温は29.2℃から30.7℃へ、最高外気温度は33.7℃から36.0℃へ。対して供給量の増加は1,440㎥、率にして0.35%です。なぜこの幅にとどまったのかは発表資料に書かれていないため、理由は推測しません。ただ実務上の含意は残ります——気温が上がった分だけガスが増えるという比例で夏の需要を見積もると、外す可能性があるということです。

範囲も正直に置いておきます。これは1社・2日分の数字であり、富山という一つの供給区域の話です。気温と需要の関係は、地域の気候や需要家の構成、ガス空調の普及度で大きく変わります。全国のガス需要が夏型に転じたと読むには足りません。言えるのは、閑散期という前提が問い直される事例が現に出ているというところまでです。

④ 経営として、何を問われるのか

設備の設計値は、たいてい冬の数字で書かれています。それは間違っていません。年間の最大は、いまも冬側にあるとみられます。

問われるのは、隣の欄のほうです。自社の供給区域で、夏のいちばん流れた日はいつで、そのとき気温は何度だったか。その組み合わせを、冬の設計値と同じ紙の上に持っている会社は、どれだけあるでしょうか。冬のピークは毎年必ず点検されます。夏の記録は、更新されても「余裕の範囲内」として流れていきやすい。

記録が出た日の気温と供給量は、いま手元にあります。設計値の隣に、その日付を書き加えておく。それだけなら、9月が終わるのを待たずに済む作業です。

まとめ(3行)

  • 日本海ガスが2026年7月22日の都市ガス供給量411,418㎥で夏期(6月〜9月)の最大供給量を更新。8日前の7月14日(409,978㎥)に続き今年2回目で、同社は要因を平均気温30.7℃のなかでのガス空調機器の稼働増と説明している
  • 同じ週、電気側でも7月21日に北海道・沖縄を除く8エリアが今夏の最大電力を記録。猛暑は電気とガスを同じ日に、同じ方向へ押す。夏は薄い季節という前提が、需要と調達の両面で問い直される
  • ただし更新幅は0.35%(昨夏の記録からの累積でも0.45%程度)、対象は1社2日分。気温に比例してガスが増えると見積もると外す可能性があり、全国の需要が夏型に転じたと読むには足りない
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